バナメイエビの養殖ビジネス:プロの秘訣と最適技術を紹介
こんにちは、KMGです。
今日はバナメイエビの養殖についてシェアします。
日本では、車海老が高価で有名であり、次に量の多いブラックタイガーシュリンプが広くレストランで利用されています。しかし、このエビはかつてマングローブ林の伐採などによる環境汚染の問題に悩まされました。特に80年代から90年代にかけて、多くの沿岸地域で開発が進み、マングローブ林が切り倒され、ブラックタイガーシュリンプの養殖が行われました。しかし、白点病などの伝染病が広まり、養殖池は汚染されて使用できなくなりました。
その後、比較的病原菌に強く、高密度で飼育できるバナメイエビが開発され、現在では海老の代表的な品種となっています。
例えば、ブラックタイガー海老ではヘクタールの池で5トンを生産できますが、バナメイエビなら100トンもの生産が可能です。そのため、多くの生産者はバナメイエビに乗り換えました。
バナメイエビの養殖は儲かる事業ですが、慎重な計画、適切な管理、最善のプラクティスの順守が必要です。
以下に、養殖を始めるためのステップバイステップのガイドを示します。
バナメイエビの養殖を始めるためのステップバイステップのガイド
まず始めるために必要なことは
1.海老の養殖の1サイクルを知る
2.養殖池の取得
3.孵化場の確保
4。飼料会社の確保と価格
5.市場価格の調査のバイヤーの確保
です。特に養殖池の取得なしには何も始まりません。
- 実現可能性の調査と用地の選択:
- 選択した場所でのバナメイエビ養殖の実現可能性を評価します。
- 水質、温度、塩分濃度、市場へのアクセスのしやすさ、適切な土地の利用可能性などの要素を考慮します。
- 適切な水源にアクセスでき、エビの養殖に適した池の場所を選択します。
- 必要な登録とライセンスを取得します。
- 養殖池サイトの準備:
- 土地を整地し、エビの養殖用の池エリアを準備します。
- 池の建設と設計を行い、効率的な水の循環と排水を確保します。
- 粗放、部分集中、集中型に必要なインフラストラクチャー(給水、曝気システムなど)を整備します。
- 池の選定:
養殖池の入手について
潤沢な資金がある場合、または既に河口近隣の土地を所有している場合を除き、最も手っ取り早い養殖池の入手方法は、既存の池を購入することです。
当然のことながら、良い池を所有者が手放すことは稀です。売り出されている池には多かれ少なかれ何らかの欠陥がある可能性があることを認識すべきです。それでも敢えて購入を検討する場合は、ある程度の採算の見込みを立てて実施するのが良いと思います。
既存の養殖池を購入する際に、重要な視点として以下を考慮します。
- 池を完全に排水でき、天日で乾燥できること。これは池の選択で最重要
- 河川の近くで汽水が年中入水できること。できれば機械を使用せずとも
-
周りに人家が近くにないこと。(生活汚水と養殖用入水が混合しないこと)
-
電気と水道が利用可能なこと。発電機や井戸も可能ですが電気は必須です
-
車両が入れる池が好ましいこと。(人力での運搬は非常に非効率餌の量は1500㎏以上/収穫1000㎏以上)
-
購買市場に近いこと。(遠いほど輸送費が嵩み、まず採算が取れなくなります)
バナメイエビの養殖の過半数を占める重要なファクターです。これらなしに安定的な海老養殖の生産はありえません。
- スタッフと管理:
- できれば経験豊富なスタッフを雇用し、養殖サイトの管理を行います。
- 池の周りに住み込むことは避け、生活排水が池に流入する危険性があるため、通いスタッフが良いです。
- 正直で優秀なスタッフの雇用はまず無理だと思ってください。なのであなたが殆どのエキスパートとなっている必要があります。
- スタッフは、あくまであなたの代わりに手足を動かすという使い方がベストです。
- 昼夜の監視が必要なのでできれば2名は雇える生産体制を組むべきです。
- 年配者であれば特に、サイトでのワークは雨が降っても炎天下でも過酷なのでスタッフの雇用は不可欠です。
- 相場は現時点でここフィリピンでは8000ペソ月+米25㎏
- 収穫時に収益の8%のボーナスだとお互い気持ちよく働いてくれる待遇です。
- 気に入れば子供の学費や、オートバイの提供など適宜してやれば餌や収穫物の盗難も少なく管理してくれるでしょう。
5. 餌:
- 餌は、フィリピンではTATEH社の飼料が大手です。首都圏近郊では1㎏あたり55ペソですが、別の島に行くと72ペソに上昇します。他にもBMEGもありますが、粗放と集中の生産体制に応じて適切に選択してください。
- 高品質な飼料を使用し、無駄に安価な飼料を選ばないようにします。
- FACEBOOKのマーケットプレースで販売されている低品質な飼料は購入しないでください。結局のところ、生産量の減少、バナメイエビの肉質の劣化、異常な匂いがあり、何一つ良いことはありません。
- 机上で採算見込みを試算する際、餌のコストを過少評価しないようにしてください。
6.孵化場
- 水産局に登録されて評判の良い孵化場での稚エビの購入をすべきです。
- 多少高くても安いものは買うべきではありません。
- 通常の稚エビは0.10-0.12/PLで購入可能です
- しかしブルーバナメイの稚エビは0.35/PLと高めですが、収穫期間が90日と短く通常のものより大型に育ちます。使える運営費に応じてこの選択は大いにアリと考えます。
- 注意すべき点は通常のものと違いブルバナメイエビはどこでもいつでもある稚エビではないのでこの稚エビの入手は孵化場が販売している地域に限られることになります。
7.試算の結果、採算が取れないようであれば、無理に海老養殖を続けずにあきらめましょう。
- 採算の計算方法は以下の通りです(1ヘクタール当たり):
PL(稚エビ)料金: 0.12-0.35/PL
飼料代: 55ペソ/kg
肥料代: 2,500ペソ/50kg
電気代: 15ペソ/kwh
燃料代: 65ペソ/l
人件費: 9,000ペソ*2
ボーナス: 8%
メンテナンス代: 20,000ペソ/harvest
詳細は別トピに記載します。
既存池の下準備
まず、
· 池を完全に排水します。
· 池干しをします。約10日から15日間実施します。
· ハンドトラクターで池底を耕します
· 池の水入れします。これで脱皮した殻や餌の残りの汚濁物を洗流しします。
· 汚泥スポットがあれば汚泥を取り除きます。
· 再度池干しをします。約5日間
· PH検査をします。これは所定の方法あり
· 石灰と肥料を散布します。種類と量は下記参照
· 天日に2日間放置します
· 池に入水します。水深は30㎝程度(太陽光が池底まで届く水深になります)
· これで珪藻類が育ってきたら稚エビ(PL)の入水です。
特に購入して初めての池準備の場合の留意点
- 池の土手の保水状態や入水口および排水口の構造物の状態をチェック必要に応じ土盛り、コンクリート構造物の修理を行います。
- 池底をPH検査の時、特に注意すべきは、黒い有機物の汚泥スポットです。これらのスポットがある場合、スコップを使用して除去します。池底の土壌のPH値を測定します。土壌のPHは重要であり、適切な範囲に保つ必要があります。
- 以下はPHに応じた農業用石灰の散布量の目安です。
PH値 石灰使用量
PH 7.0未満: 0kg
PH 6.5-6.9: 500kg
PH 6.0-6.4: 1000kg
PH 5.5-5.9: 2000kg
PH 5.0-5.4: 3000kg
また、土壌中の有機物含有比率も検査しましょう。これは特別な器具を購入するか、最寄りの水産局の検査室へ依頼する事でも可能です。安全な範囲では、有機物の含有量は6%以下であるべきです。
有機物を分解するために窒素が必要ですが、尿素は推奨されないことに注意してください。代わりに、窒素源としてSodium NitrateとCalcium Nitrateがおすすめです。6%以上の含有率であれば、25-50kgあるいは100㎏/HAでも十分です。
池底を整地するために以下の手順を実行します。
- 池底を平行に耕します。
- 農業用石灰とナイトライトを50-70%散布します。
- 池底を垂直方向に耕します。
- 残りの石灰とソジウムナイトレイトを散布します。
- 最後に、池底を完全に乾かします。
- 湿った部分や水没している部分がある場合、消毒が必要です。消毒には消石灰または生石灰を使用します。これにより、PHを10以上に引き上げ、殺菌が行われます。目安としては、1000㎏から2000㎏/HAが適切です。
- 感染症対策として、塩素消毒も効果的です。廉価な方法としては、スイミングプールで使用される次亜塩素酸カルシウムの粒状を散布することができますが、火傷に注意が必要です
8. 水管理:
水質パラメータを定期的にス測定器具で測定し、記録を取り、有害物質の蓄積を防ぐために必要に応じて汽水を交換します。
9. 稚エビの選択:
高品質の稚エビ(PL)は、水産局に登録された孵化場から調達します。
10. 池の準備:
化学肥料と有機肥料を使用して、エビの自然な食料源である珪藻類の成長を促進します。詳細については前述の通りです。
11. 稚エビの入池:
選択した稚エビを飼育密度に合わせて池に導入します。
12. 給餌と栄養:
バランスの取れた栄養価の高い給餌を与え、水質と病気の管理に注意します
稚エビの入池
- 選択した稚エビを、適切な飼育密度である(部分集約型生産では通常 1 平方メートルあたり約 10 ~ 50 尾のPL10)池に導入します。
- 1ヘクタールあたり50万尾から60万尾を入水するイメージです。
- 稚エビを購入し、池に入れる時刻は早朝が適しています。
- 通常、稚エビはプラスチック袋に入って販売されていますが、稚エビがサイトに届いたら、30分ほど池の水面に浮かべておき、水温をなじませます。
- 袋の中の稚エビに死骸がないかなど、健康状態を確認します。
- 30分から1時間後、袋を開け、少しずつ袋の中の水と養殖池の水を混ぜ合わせなじませながら、ゆっくりと稚エビを袋から放流します。塩分濃度は、孵化場で指定の塩分濃度で順化させて供給するように要請できます。
給餌と栄養:
エビにバランスのとれた栄養価の高い給餌を与えてください。飼料の質は
海老を成長する上で一番重要な要素で栄養価の高い確かな飼料を与えることで
生産時に抱える問題を大幅に減少できます。
言い換えれば、
池が良くて、PLも健康なら餌さえ確かなら誰がやっても普通に育ちます。
給餌頻度と分量は、飼料会社のガイドに従ってください。
出展元:TATEH AQUAFEEDS社
TATEH社の成長に合わせて餌のサイズが変わります。種類は以下の通り
給餌量の目安は下記の通り
参考として
粗放養殖の場合、1平米あたり5尾程度の入水の場合は自前で育てた珪藻類、食動物プランクトンが消費されてしまうまでの約1か月は給餌を与えなくても成長します。
その後は、市販の飼料を給餌し成長を促します。しかしこの方法は当地のファーマーが資金不足という制限があって行う方法ではっきり言って儲かりません。
自分で池を持っていて退職生活をしているような人が殆ど自分で日々の管理を行う場合に限り向いている型となります。
ちなみに販売収入は125000ペソくらいに対しコストが5万くらいで75000が収益といった感じでしょう。
この場合常用のスタッフは雇えませんので、留意すべきです。ざっくりと月2万くらいの収入かと思われますが、当地の大卒の平均月収に相当する感覚です。
よって、私なら、部分的集約型の生産方法一択です。
スタッフを雇える生産型式にするため必然的により生産量を上げていく選択となります。
飼育密度はインフラに規模により、増減可能なところがバナメイエビの養殖の大きな利点で収穫が1ヘクタールあたり500㎏以上を見込むのであれば、
部分集中型 平米あたり最大10-50尾ぐらい
集中型 平米あたり100-400尾
稚エビを投入するイメージになります。
フィリピンでは、生産者の多くが個人であり、部分収集型の生産モデルが一般的です。このモデルでは、生産量を増やし、安定的な生産を実現しつつ、インフラコストを抑えることができます。
このモデルでは、水替えに必要なポンプの燃料代や、溶存酸素の確保、残余物の収集に必要な水車が使用されます。一般的な業界の目安として、生産量が300〜500㎏の場合、1HPの水車が1台必要です。
例えば、収穫量が5000㎏の場合、計算式は次の通りです:5000 / 500 * 1HP = 10HPが必要です。次に、1HPは0.75Kwhに相当します。電気料金は1kwhあたり15ペソです。養殖期間は100日とし、実際の運転は約90日(1日12時間)と仮定します。
したがって、電気代の生産コストは次のように計算できます:
7.5KWh × 15ペソ × 12時間 × 90日 = 121,500ペソ/収穫 = 24.3ペソ/kg が1㎏あたりの電気代の生産コストです。
同様の計算方法を使用して、以下の生産コストを計算します:
餌代コスト: 68.75ペソ
人件費: 12ペソ
ボーナス: 60,000ペソ/収穫、したがって12ペソ
PL(稚エビ)は35万尾の購入と仮定すると、122,500ペソ/収穫、
したがって24.5ペソ
これらを合計すると、141.55ペソ/kg が1㎏当たりの生産コストとなります。
採算の詳細については、別のトピックで説明します。
水質と病気の管理:
水質を定期的に監視し、最適な状態を維持するために必要な調整を行ってください。
水質汚染を防ぐために死んだエビや過剰な餌を取り除くなど、適切な池の衛生管理を実践してください。
水質管理
給餌は、給餌スケジュールでの注意点で示した通りエビの搾餌は一定ではありません。そのスケジュールを把握し、過剰な給餌を防止します。
- 給餌スケジュール
FEED TRAYを使った細かいデータ収集がスケジュールのかなめになります。
もちろん飼料会社のガイドは目安としますが、
海老の成長:
脱皮の周期:脱皮後1-3日は摂餌量は50%に落ち込み摂餌をしません。
この時期は、脱皮後まだ身体が柔らかいので隠れています。
水温の急変化:これでも摂餌量が変わってきます。水温は高ければ摂餌が旺盛になり水温が低くなると少なくなります。データでは水温の2度以上下がると脱皮を誘発し摂餌が落ち込みます。
これをなるべく正確に予測するためにFEED TRAYを使った小まめなデータ収集が重要で、飼料の無駄な給餌、並びに水質汚染の軽減につながります。
飼料還元率が0.3下がれば5000㎏収穫量に対し1500㎏の飼料の節約になります。
金額にして当地の相場で78000pの節約になり計算です。
また、
稚エビの成長にともない水質が汚れ、換水を必要とします。良好な水の状態を維持するために、水質パラメータを定期的に測定、記録し監視します。
維持すべきパラメータは下記の通り
要件 最適 測定時刻
水温 摂氏28-32度 8AM 15PM
pH 7.5-8.5 8AM 15PM
溶存酸素 4.0ppm 3AM 8AM 15PM 22PM
アンモニア 0.1ppm 8AM
塩分濃度 10-40ppt 8AM 15PM
必要に応じ、満干潮時を利用し、排水、入水を行います。
最適な水色はミルクコーヒー色と言われています。
緑色の養殖水はの多く張った水質は不向きです。水換えが必要です。
プロバイオティクスなど利用し水質を保ってください。
バイオセキュリティ
農場に入る機器や車両の消毒手順など、病気の侵入と蔓延を防ぐためのバイオセキュリティ対策を実施することが肝要です。
病気の発生リスクを最小限に抑えるために人員、車両の出入り口はバイオセキュリティ対策を実施します。次塩素酸カルシウムの粒状を使いましょう。
病気の蔓延を防ぐために、事前予防が必須です。
監視とメンテナンス:
エビの成長と健康状態を定期的に監視します。
成長速度と全体的な健康状態に基づいて、給餌と管理の方法を調整します。
記録の保管と分析:
特に部分集中並びに完全集中型は、
水質パラメータ、給餌スケジュール、エビの成長率など、養殖場でのすべての活動の詳細な記録を維持します。
例として
このフォームを使用してファームのパフォーマンスを分析し、必要な改善を行います。
エビ養殖を成功させるには、継続的な学習と変化する条件への適応が必要であることを忘れぬ事が肝要です。 地元の水産養殖の専門家や協会からアドバイスを求め、ワークショップやトレーニング プログラムに参加し、エビ養殖の最新動向や病原菌の情報を常に把握します。
収穫時期と方法:
90日後部分収穫を投網で実施していき、バイヤーに販売していきます。これで凡その市場価格を把握し収穫時期のスケジュールを立てます。その後100日前後でハーベスターを雇い全収穫をします。
エビは通常、市場サイズ(凡そ18g)に達すると収穫の準備が整い、これには約 3 ~ 4 か月がかかります。
池の水を抜き、水路に収穫網を設置しておきながら定置網をハーベスター(5名から10名)が池中で引き水路に寄せて収穫すすめていきます。
マーケティングと販売:
地元の市場、水産物仲買業者、または収穫したエビを販売するための加工施設とのつながりを持ちましょう。コミュニケーションがこの場合、現地語での円滑な取引となるので語学の習得が大きくプラスになります。またなくてもできないわけではありませんが、その場合はFBなどのリステイング広告やあらゆる広告媒体を活用しましょう。
通常良い生産、安定した収穫さえすれば、向こうから情報を取り付けて寄ってきますので、特に販売に苦労する必要はありません。価格はファーム出し価格なので小売価格の50-60%程度ですが、5000kgともなるとやはり餅は餅屋に頼むのがベターと思われます。、まずは、生産者は安定した生産体制を確立すべきでしょう。